感情を増幅させた先にあるもの

感情を増幅させた先にあるもの。

誰もが知るように、そこにあるのは、増幅した感情だけではない。
増幅した感情は、新しい反応パターンや、新しい思考、新しい環境、人間関係の変化と、感情以外のさまざまに影響していく。


過去に抱いた感情がすでに増幅している時、特に、それが怒りや悲しみだった時に、それを原因とする様々に手こずった経験を持つ人は、割とたくさんいるかもしれない。

癒しが過去にあれだけ流行ったところを見ると、多くの人がそうなのだろう。

個人が個人の人生の中で抱えた傷とそこから生まれ増幅した感情が、一生涯に渡り、その人を苦しめることも珍しくない。
そして、その周囲の人が、それに振り回されることも珍しくない。

周りの人は、受け止めたり、いつまで過去にこだわるねんとイライラしてみたり、癒そうとしてみたり、距離をとってみたりしながら、相手が自分にとって必要な人の場合は付き合っていく。

傷ついた人は往々にして、感情を何度も自ら刷り込み続け、その傷とそこに伴う感情を、自らのアイデンティティにしていることがある。

そして、その傷や感情は、その人自身が手放す気になるまで、癒されない。
傷が癒えたり、感情が収拾していくのに必要な期間は、他人が決められるものではない。

時には、傷ついた感情は、その人自身の現在に有利に働くこともあり、特に、今、幸せでない理由としては非常に好都合に働くことがある。
その場合、癒しは非常に時間がかかる。

そして、時に、その人が、傷を起点とする感情を抱き続けることは、周囲にその感情を伝染させることがある。

そして、傷ついた人は怒っていることが多い。


過去を思い出せば思い出した回数だけ、傷は刷り込まれ、癒すことの難易度は上がる。
そして、やがて、増幅した感情が生み出したものがたりが生まれる。

生まれたものがたりは、現実を動かす。
メタファーは、現実を動かすからだ。
それらは、ポジティブに働くのと同じように、ネガティブにも働く。

そして、さらに、ものがたりの影響を受け、感情は増幅し深みを増す。
人は、都合よく思い出したい時に、ものがたりを思い出すことができる。


かように、人生はものがたりでできているけれど、新しく生み出したくないものがたりというものも、またあるかもしれない。

そういう時は、最初に感情を抱いた時が重要だ。

なるべく早く、その感情を、その度ごとに手放す努力がいる。
その感情が、増幅して、ものがたりを生まない努力がいる。

感情に対抗するものは、いつでも理性だ。
感情に突き動かされた理性になる前に、理性そのもの、つまり、知恵を使って、感情を増幅させない努力がいる。

それは、新しく望まないものがたりを生まない努力だ。
過去の望まなかったものがたりについてはどうしようもないが、新しいものがたりが生まれた後は、もっとめんどくさいことになる。


一個人の感情の集まりが、国家の感情だ。