彼女のはなし

ふと顔が浮かんだ人がいた。

彼女は私と同じ年。
前の会社のほとんど同期で、同じ系列のクライアントを担当していた女の子。
私が会社を独立した時、一番最初に発注書のFAXをくれた。
キムタクが大好きで、犬を飼っていた。

37才の時、彼女は死んだ。
ひとり住むマンションで。
彼女が会社に来ず、連絡がつかないので、会社の人が見に行って発見された。
彼女には持病があった。

せっかく震災で無事だったのに。


彼女は東北に住んでいた。
住んでるマンションが遺体置き場になっていて、臭いがつらいと言っていた。

私は彼女が好きだった。
2人で、電話で、ありえねえ!と2人だけが分かち合える仕事の愚痴を言い合ったり、楽しかった。



私は、お葬式に行くつもりだったのだけど、吐いて吐いて、体が動かなかった。
何かが行くのを拒否した。

母は言った。
行くのはよしなさい。
同じ年の女の子で、あなたは生きてる。
親御さんがいたたまれないかもしれない。
祈りはどこからでも届くから。

それで、花だけ送って、ひとりで泣いた。

さっきふと彼女の顔が浮かび、私は元気ですよ、と思った。

あなたの分も私は生きる。
頑張ってね、と言ってくれたあなたの思いは私の中に生きてる。
体は死んでも思いは生きる。